腎臓病の新しい検査「SDMA」について




























症例:ミニチュアダックス 未避妊雌
症状:急な食欲不振、腹痛
(もともと鼠径ヘルニア、避妊手術を検討されていたが、手術予定日前に状態悪化、入院治療)
術式:卵巣子宮摘出術(いわゆる避妊手術)左鼠径裂開部筋肉筋膜ごと縫合
予後:翌日から元気食欲回復。退院。
コメント;
前述の男の子の鼠径ヘルニアに比べたら軽症ですが、子宮が鼠径ヘルニア門から脱出したため疼痛、元気食欲低下がみられました。
子犬の頃から鼠径ヘルニアや臍ヘルニア(いわゆるでべそ)がある子は、今回のようにヘルニア門(腹壁の筋肉の隙間)から内臓や脂肪が飛び出してきてつらい思いをすることがあります。
主治医の先生にヘルニアの検診、治療についてよく話し合っておくことが大事です。
ブログ記事はこちら→鼠径ヘルニアの術創
症例:雑種猫 去勢雄 1歳7か月
症状:若齢時よりストラバイト結晶による慢性膀胱炎 尿路閉塞をくりかえす(膀胱結石 砂状を摘出後もまたすぐに結石再発)
術式:包皮粘膜を利用した会陰尿道ろう(渡邊式)
予後:良好 先日のエコー検査で、膀胱内にあった結石(砂)がすべて排出されていることが確認された
コメント:尿路結石は昔からある病気ではあるのですが、最近の傾向としてどんなに処方食をきちんと食べても、膀胱炎の管理をしても再発する患者さんが増えているように思われます。
腎臓から膀胱までの尿管閉塞に対しては、前述の尿管切開やステントで外科的対応を行います。
膀胱から下部の尿道での、難治性再発性閉塞の第一選択手術となるのがこの包皮粘膜を利用した会陰尿道ろうです。
この術式では、飼い主にとっても猫本人にとっても術後自然な排尿が可能で、なおかつ陰部の尿やけや尿漏れを起こしにくいという利点があります。
また尿道がとても広くなるので、ふたたび形成された細かな結石や砂は排尿時に尿と一緒に排泄され、閉塞を起こしにくいようです(今回の子も、術前に大量にあった尿砂が、術後に排泄されて無くなっていることがエコーで確認できてます)
ただしすでに尿道の著しい炎症や壊死が奥まで進行してしまっている場合はまた別の尿路再建術を考えていかないといけません。尿路のどこまで損傷されているか、排尿に関わる神経が無事であるかどうか、などの状況により手術法が選択されます。
この手術は、尿路閉塞(だいたい急性腎不全や高カリウム血症が続発している)という命にかかわる緊急事態を解除するという性格上、どうしても緊急手術になる機会が多いです。猫ちゃんの救命と生活の質の維持のため、飼い主さんにも緊急の決断が迫られる手術になります。
いちばん上の画像の左が手術前、右が手術後です。
最近 改訂された麻布大学の渡邊先生の術式ですが、この術式だとホントにどこ手術したの?と思うくらい傷跡がキレイです(^。^)y-.。o○
症例:カニンヘンダックスフント 未去勢オス
術式:逆U字切皮後、下腹部皮膚・皮下組織を陰茎ごと反転しヘルニア門を確認。裂開した腹壁をメッシュで補強・再建。会陰ヘルニア気味でもあったため、同時に精巣摘出、輸精管腹壁固定
術後フォロー:皮下液体貯留防止のためアクティブドレーン設置、鎮痛のためフェンタニルCRI、尿道カテーテル設置
予後:良好
コメント:会陰ヘルニアはいわゆる『ヒトの脱腸(鼠径部)』に近い疾患です。
主にまだ子宮、精巣が残っている中高齢のワンちゃんに発生することが多く鼠径部の筋肉の隙間から内臓脂肪、大網、小腸、膀胱、前立腺、そして子宮などが体外に飛び出してきます。
原因は加齢による腱・筋肉量の低下や、性ホルモンによる前立腺肥大・子宮蓄膿症や子宮内膜症による腹圧の増加などが考えられます。
筋肉の隙間(ヘルニア門)が大きければ臓器が脱出してもしばらくの間は通常生活をおくることができますが、脱出した臓器が捻転・閉塞・壊死・破裂してしまうと命にかかわる疾患になってしまいます。
特に膀胱や腸が脱出してきた場合は緊急性が高く、なるべく早い外科的整復をお勧めします。
たいへん紛らわしいのですが、
ヘルニア=本来あるべきものが、ありえない部位にでてきてしまったもの という意味ですので、出てる部位、モノでその名前が変わります。
例えば
脊椎と脊椎の椎間から脊髄神経腔へ椎間板が脱出=椎間板ヘルニア
鼠径部に脂肪や膀胱、子宮、腸が脱出=鼠径ヘルニア
陰嚢に(以下同文)=陰嚢ヘルニア
会陰部に(以下同文)=会陰ヘルニア
いずれも好発犬種はダックスやコーギーです。柴犬(とその雑種)は去勢手術をしていない方が多いせいかもしれませんが、会陰ヘルニアになる方が多いような気がしています。
症例:フレンチブル 7歳
治療:血中濃度モニターしながら抗てんかん薬(ゾニサミド)内服。内服開始から、てんかん発作回数1/10以下に抑えて良好に維持。
今回、急性膵炎の入院治療中にてんかん発作。
即 座に抗てんかん薬(レベチラセタム)静注。発作は治まるが喘鳴と興奮が見られたためネンブタール、デキサメタゾン静注。下顎、腋下、そけい部をアイシン グ。耳介や体表に水スプレーして気化熱を利用したアイシング行う。(普段は気化熱を利用する場合はアルコールスプレーを用いるのだか、今回の子はアトピー があり皮膚がデリケートなため、口腔内の洗浄にも使える抗菌作用のある消臭液を希釈して用いた)
治療開始から5分後には画像のように穏やかな状態。
今回、膵臓壊死の鑑別診断のため無麻酔CT撮影。そのついでに脳も撮影。水頭症がないことを確認。
コメント:以前からてんかん発作の鑑別診断として脳MRI撮影を提案していた子です。
飼い主様は長時間のドライブが苦手な短頭種であること、全身麻酔下でのMRI撮影に躊躇されていました
今回、重症の膵炎かどうかの鑑別診断として入院中に撮影したCTでしたが、少なくとも水頭症が原因では無いという情報を飼い主さんにお伝えすることができました。
他のてんかん様発作の鑑別として、脳炎、脳梗塞、脳血栓、脳腫瘍などがあるかもしれない、という点は十分考慮して治療していかないといけません。


症例:パピヨン 9歳10ヵ月
術式:胆嚢漿膜面で肝臓より剥離 胆嚢内容物除去後、総胆管洗浄・開通確認 胆嚢頸部で胆嚢切除
フォロー:肝臓、胆嚢の病理組織学的検査 胆汁細菌培養(Gram陽性球菌検出)肝臓回復のための栄養管理(ベジタブルサポートドクターズプラス)
予後:順調に回復
コメント:胆嚢疾患は重症化するまで無症状であることが多い疾患です。
健康診断時などに偶発的に胆嚢疾患を発見されることも多く、当院の7歳以上のペットを対象にしているシニア検診では6割以上の方が胆嚢の異常が見つかります。
無症状の方は、内科治療と検診で見守れるか、外科介入が必要であるかの見極めが大事です。
今回のように症状があって来院されて、なおかつ黄疸が出ている症例は術中術後の死亡率が高く、約3割が死亡、術後の合併症も6割以上でみられるといわれています。
ただし手術前の入院治療で黄疸が消失した症例の回復率は良い傾向にあるので、積極的な内科・外科治療が望ましい疾患と言えます。
パグ、ボストン、フレンチブルドック、ブルドック、シーズー、狆、ペキニーズなどの犬種のことを短頭種といいます。
たいへん愛らしく魅力的な犬種ですが、この可愛らしい外貌や体型を品種改良する過程で健康上の多くの問題を抱えるようになってしまいました
なかでも一番大きな問題点は、短頭種気道症候群です。
この子たちは鼻の孔がせまく気道も狭いので常に一生懸命呼吸しています。
高い鼻をぺちゃんこに改良する過程で余ってしまった気道のたるみ(軟口蓋といいます)が気道を塞ぎがちなので、熟睡するとよくイビキをかく子が多いようです。
これは呼吸器や麻酔の先生曰く、「天然の酸欠状態」にいつもなっている状態だそうです。
また、一生懸命息をすったり吐いたりしているのを長年繰り返すうちに、気管が固くつぶれやすくなったり、喉頭という気管の入り口にマヒがおきて、呼吸困難になったり吸引性肺炎になりやすくなったりします。これらの鼻ぺちゃさんの呼吸器にまつわる疾患は、短頭種気道症候群と呼ばれています。
一般的に短頭種は寿命が短いといわれていますが、原因の一つに、このような短頭種気道症候群を発症しやすいのがあるのではないかといわれています。
当院では短頭種の飼い主さんに、短頭種気道症候群という病気がある事を知ってもらい、呼吸を楽にする処置があることもよくお話ししています。
具体的には、まだ若く呼吸器疾患を発症する前に狭い鼻腔を拡げ、軟口蓋を短くカットしてあげる事で、楽に呼吸が出来るように手助けしてあげることができます。
(もちろん老齢のわんちゃんでも、心肺•内臓が丈夫であればこの手術はできます)
下痢や嘔吐なんて、2〜3日で治るかも.....と、自宅で様子を見てたらなかなか治らない、そういう時は要注意です。
ちょっとした体調不良からくる単純な下痢や嘔吐は、お薬や注射、食事を控えてお腹を休ませるだけでもすぐ治るはずですが、なかなか改善しない場合はやっかいな病気であるかもしれません。
上記のような普通の下痢の治療に2〜3週間以内に改善しないものを慢性下痢症といい、原因として、内分泌(ホルモン)性、膵臓疾患、肝臓疾患、食事性、炎症性、感染性、がん、アレルギー等が考えられます。
下痢の診断の時にまずする事は、飼い主さんにいつも食べているものやおやつ、拾い食いしないか、異物を食べていないか、いつもと変わったイベントが身近で起こってないかをよく聞き取ります。
次に検便です。
これで消化不良や消化管内寄生虫がいないかどうか、腸内細菌のバランスはどうかをみていきます。
幼い子では、ウイルスや寄生虫、原虫感染で下痢が起こる事がよく知られています。
この画像は、腸に寄生する原虫、ジアルジアです。
エコー検査も消化器の疾患を診断する有効な検査です。
この子はエコー検査で急性膵炎を診断する事ができました。
エコー検査ではお腹の中の他の臓器もくまなくみる事ができますので、特に中高年のわんちゃん猫ちゃんにはぜひおすすめしたい検査です!(もちろん若い子にも!)
隠れていた他の臓器の病気をみつけることもよくありますし、消化管の腫瘍や異物などを診断することもよくあります。
また血液でわかる食事アレルギー検査も、わんちゃんの食事アレルギー性の消化器疾患の治療にはとても役に立ちます。
ここまで診てきてもなかなか原因が分からない時、または疑わしい病気の確定診断には内視鏡検査がとても役に立ちます。
内視鏡で診た腸の画像です。
左が正常。右が異常な腸です。
さらに腸の粘膜を生検鉗子で少量採取して病理組織学的検査をすることで、顕微鏡レベルで腸の病変を診断する事ができます。
ここ最近は十二指腸の炎症性腸炎が増えているなという印象です。
どの犬種にもみられる病気ですが、特にダックス、トイプードル、そしてヨークシャーテリアの子に多い印象があります。
内視鏡で炎症性腸炎の診断がつけば、低アレルギーフード、免疫調整剤、整腸剤やサプリメントを使って多角的に治療していきます。
この子はパルのねこちゃん、モノホシ君です。
とてもお腹が弱く、おそらく保護されたときからずっと、何年も下痢が続いてました。縁あってパルのスタッフになりましたが、上記のような検査を全部してようやく健康なお通じが出来るようになりました。
モノホシ君の治療食(手作り)です。
けして専門医という訳ではないのですが、ウサギ、モルモット、ハムスター、小鳥は好きで当院ではよく診ています。
ちなみに、このカピバラさんは買ったのではありません。セブンイレブンのくじで当たりました
ウサギ、モルモットは歯の伸び過ぎによるトラブル、毛玉が胃腸に詰まる毛球症や食滞、子宮疾患が多いです。
一生歯が伸び続けるいきものですので、適切な食事管理をしないと伸びすぎた歯のせいで食欲不振が起きてしまう事があります。
生まれつき歯の噛み合わせが悪い子や、ケージなど固すぎるものをかじって歯が歪んでしまった子もいます。
定期的に伸びすぎた前歯や奥歯をカットしにくる方も多いです。
あと、室内飼いのウサギさんでは爪が良く伸びますので爪切りだけに来院される方も多いです。
毛球症は毛づくろいの時に飲み込んでしまった毛が胃腸にとどまってしまう疾患です。
毛の抜け替わりの時期によくみかけます。ほとんどの方は内科治療で良くなるのですが、中には大きな毛玉が胃に詰まってにっちもさっちもいかなくなる子が.....
そういう場合は消化管造影で確認して、毛球がつまっているのを確認して早めに胃切開して摘出してあげないといけません.....
これが胃の中に詰まっていた毛球です。
今度はセキセイインコさんです。
くちばしや足にとてもひどいガサガサした病変がみられます。典型的な疥癬の症状です。
お薬を投与して3週間後、あとかたもなく綺麗になりました
犬猫の泌尿器疾患で、動物病院に来院されるのが多い疾患は、膀胱炎、尿路結石、慢性腎不全です。
この子はこの三つの疾患を全部ひとりで抱えています
高齢のわんちゃん猫ちゃんによく見られる慢性腎不全というのは、血液検査の異常値や症状が出てくるまでは健康診断でしかわからない病気です。
腎臓の異常はまず、尿比重(尿の濃い薄い)にあらわれてきます。
薄い水っぽいおしっこをたくさんするようになってきたな.....と感じられたら、それは初期腎不全の兆候かもしれません。
慢性腎不全の進行状態把握にはIRISの病期分類をよく利用します。
ざっくり説明しますと
ステージⅠ まだ血液検査には異常値が出ていないが、尿比重が低くなってきている
ステージⅡ ちょっと血液検査に異常が出てきてるが、ほとんど症状がない
ステージⅢ 血液検査の数値が悪くなる。嘔吐や食欲不振がみられる
(調子が悪いんです.....と病院にいらっしゃる腎不全の子は、このステージの子がほとんどです)
ステージⅣ 末期腎不全。積極的な治療をしないと生命維持が困難な状態
慢性腎不全は腎臓の老化からくる疾患です。
一見健康にみえても、ステージⅠの時点で腎臓の機能は67%が失われているといわれています。
腎臓は一度悪くなると腎臓移植でしか直す事ができず進行していく病気ですので、ステージがまだ進行していないうちに早期発見して、残ってる腎機能を大事にだいじに維持していくのが重要な治療になってきます。
この猫ちゃんはマメに健康診断をしていたので、血液検査で腎臓の異常値が出るだいぶ前から尿比重の低下と右側の腎臓の機能低下があることが分かっていました。
あと1~2年で本格的に腎臓が悪くなるだろうから、大事にしないとね......と飼い主さんと話し合っていた矢先、急に元気食欲がなくなり、エコー検査で尿管に結石が詰まっている事が判明しました。
これがそのときの手術画像です。
ピンセットでつまんでいるのが尿管結石ですが、とっても小さいです!こんな小さなものに苦しめられるなんて
その後尿管を縫合してます。
尿管の後ろにジョンソン綿棒がみえてますが、この綿棒と尿管の太さはほぼ同じくらいでしょうか。
この細い尿管を縫合するのはとても大変なのですが、こんな時パルには秘密兵器が
それは手術用顕微鏡です!
これを使うと細い尿管がまるでゴムホースのように大きく見えます。
顕微鏡の接眼レンズが二カ所あるので助手の看護師さんと一緒に術野をみることができます。
事手術が終わって、その後もいろいろ他の病気が出たりと大変だったのですがいまではずいぶん体調も落ち着いて一安心しています。
ですが、予想していた通り慢性腎不全がでてしまいました
今はまいにち皮下点滴、処方食、お薬で腎臓を大事に保護しながら頑張っていただいてます。
今度はわんちゃんの尿路結石です。
この子はまだ若いのですが、左の腎臓に大きな結石が出来てしまいました
結石が出来る原因としては、おやつや人の食事の食べ過ぎ、犬種、体質などいろいろな因子があります。
1回結石が出来てしまった子は体質もあると思いますが再発がとても多いので、結石予防療法食やダイエット、水分補給、定期検診などをおすすめしています。
この子、ミニチュアシュナウザーも結石が良くできる犬種です!
ご用心ください。