パル日記

2024.07.31

獣医師コラム★第6回『アトピー性皮膚炎』

みなさんこんにちは。

第6回コラムは最近、皮膚科の川野先生に弟子入りをしました船田が担当させていただきます!

 

今回は犬アトピー性皮膚炎とその必勝攻略法について分かりやすくお話しさせて頂こうと思います。

 

1.犬アトピー性皮膚炎について

犬アトピー性皮膚炎の罹患頭数は増加傾向にあり、約10%程度はこのアトピー性皮膚炎を発症している状況にあると言われています。

症状としては、痒み、炎症、脱毛、外耳炎など多岐に渡り、犬のQOL(生活の質)を著しく低下させます。

 

 

2.犬アトピー性皮膚炎の病態と発生機序

犬アトピー性皮膚炎の病態において、過剰なTh2型免疫応答、皮膚バリア機能の異常といった遺伝的要因、環境抗原の暴露やブドウ球菌やマラセチアなどの増悪因子といった環境要因が複雑に絡み合っています。

痒みの発生機序としてはまずアレルゲンが皮膚から入ってくるとTh2細胞が活性化して痒みの原因であるインターロイキン31(IL-31)という物質を出します。そして痒みの神経にいき脳に伝わり、引っ掻けというスイッチを押します。そうして、皮膚を傷つけることでさらに皮膚のバリア機能が低下してアレルゲンが入ってくることで痒みの負のサイクル(図1)が回っていきます。

 

3.腸内細菌から痒みを攻略するアトピー治療

今までのアトピー性皮膚炎の治療としてはステロイド剤の治療による免疫抑制効果が主流となっていますが、この治療には長期間の使用による肝障害や副腎の機能低下などの副作用が問題となり、アトピー性皮膚炎の改善には安全性が高く、かつ免疫機能を整えるための根本的治療が求められています。そこで、当院の皮膚科診察では川野メソッドに基づき腸内環境を整えることでアトピー性皮膚炎の根本的治療を行っています。上記の記載の通り、犬のアトピーの痒みの原因はTh2細胞です。それを抑えてくれる免疫システムが自分たちの体の中にあり、その役割をするのが制御性T細胞です。つまり、この制御性T細胞をどうにかして増やしたい。じゃあ、どうすれば増えるのかというと方法が2つあります。一つ目が乳酸菌、2つ目がオリゴ糖(乳酸菌の餌)です。まず、お腹の中で乳酸菌が増えると、乳酸菌が酪酸という短鎖脂肪酸という物質を生み出します。この酪酸は制御性T細胞を活性化させます。活性化した制御性T細胞はIL-10という物質を出し、これがTh2細胞を抑制します。これが痒みの抑制メカニズムです(図2)。さらにオリゴ糖の中で最も小さいケストースを飲むと、乳酸菌の活性化、また腸内細菌であるビフィズス菌も増え、そのビフィズス菌が出す酢酸も増えます。その酢酸を食べる酪酸菌が増えると酪酸菌が増え、この酪酸が増えると制御性T細胞が増えてILー10という物質を出すことでアトピーの原因であるTH2細胞を抑制します。ちなみに犬がケストースを飲むと腸内に存在する健康維持に必要なビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌を選択的に増やすこともわかっています。

アトピーに困っているわんちゃんが多くいると思います。また、アトピーに対して薬を使わない方法に少しでも興味があれば、皮膚科診察をぜひ受診してみてください!

 

獣医師 船田