パル日記

獣医師コラム★第12回『犬の僧帽弁閉鎖不全症』
こんにちは。獣医師の本卦、本多、大塚です。
第12回目の獣医師コラム、テーマは『犬の僧帽弁閉鎖不全症』です。
健康診断のシーズンも終わり、新たに病気が見つかってしまったワンちゃんネコちゃんも多いの
ではないでしょうか。
今回はワンちゃんの心臓病の中で最も発生率が高い僧帽弁閉鎖不全症について紹介していきます。
【心臓の構造】
心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の四つの部屋があります。
全身からかえってきた血液はまず「右心房」に入り、「右心室」を経て肺に送り出されます。
肺で酸素をもらった血液は「左心房」に入り、「左心室」から全身に送り出されます。
また、心臓には、血液が一方向に流れるように、部屋と部屋の間に「弁」という扉がついていま
す。弁は房室弁(三尖弁と僧帽弁)、肺動脈弁、大動脈弁の四つがあり、その他にも腱索は房室
弁(三尖弁と僧帽弁)と筋肉を繋げる役割をもっています。
【僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁逆流とは?】
僧帽弁逆流は、弁装置(弁・腱索)の粘液腫様変性によって弁の肥厚や腱索の伸展あるいは断裂
が起こることにより左心房から左心室にいく血流が逆流することがほとんどです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症は高齢のどんな犬種でも発生する可能性がありますが、特に小型犬で多く
見られます。
好発犬種として、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、トイプードル、マルチー
ズ、シーズーなどがあげられます。
【逆流による影響】
僧帽弁逆流が起こると酸素を多く含んだ肺からの血液を全身に送る量が足りなくなる為、心臓が
主に全身へのポンプの役割を担う左心室に負担をかけて補おうとします。
その結果、発生初期の段階では無症状のまま維持している状態となります。
しかし、病気が進行し補いきれなくなるまで逆流量が増加していくと血液が心臓(主に左心房)
に溜まり始め、心臓が拡大します。
さらに進行していくと溜まった血液は肺の中に溜まり始め、緊急性の高い疾患である『肺水腫』
となってしまいます。
【症状】
軽度:散歩の途中で座り込む、寝ている時間が長くなる
中程度:散歩に行きたがらない、食欲が落ちる、運動後や興奮すると咳をする
重度:ほとんど動こうとしない、安静時にも咳が出る、突然倒れる、呼吸困難、舌の色が真っ青に
なる(チアノーゼ)
【診断】
僧帽弁閉鎖不全症は身体検査、画像検査(レントゲン検査、心臓エコー検査)にて診断されま
す。
レントゲン検査では心臓の形や大きさ、肺水腫の有無の評価を行います。
心臓エコー検査では心臓の内腔や弁の構造、動き、異常な血流、血流の方向や速さなどを計測し
て、心臓の拡大度や重症度の評価を行います。
その後これらの検査所見を元にアメリカ獣医内科学会(ACVIM)が定めた、以下4つのステージ
のどの段階であるかを診断します。
【ACVIMのステージ分類】
【治療】
一般的にはstageB2の段階で投薬治療を開始します。
治療には強心薬、血管拡張薬、利尿薬をそれぞれ状況や重症度を考慮しながら組み合わせていき
ます。
【最後に】
僧帽弁閉鎖不全症は初期の段階では症状が出ないため、発見が遅れてしまうことが多々ありま
す。心臓の状態を早期に把握して病気の進行を遅らせるためには、定期的な健康診断が非常に重
要です。
また、肥満は心臓に負担をかけてしまうため、適切な食事と運動によって太らせないように心が
けていきましょう。
獣医師 本卦、本多、大塚
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