パル日記

獣医師コラム★第13回『慢性腎臓病』
みなさん、こんにちは!本院院長の宮本です。
最近うちにくることになったかもめちゃん(下段)です。先住の猫たちともだいぶ仲良くなりました。
さて突然ですが、おうちにいるわんちゃん、ねこちゃんで以下に当てはまる症状はありませんか?
- 最近、水を飲む姿をよく見かける
- おしっこの量が増えた(トイレシートをよくかえるなど)
- 最近ちょっと痩せてきた
- 食事を少し残すようになった
- 皮膚の張りがなくなってきた
- よく吐くようになった
- 肉球や鼻の色、歯茎の色が薄くなった(ピンク色の子に限る)
もしこれらのうち1つでも当てはまることがあれば、慢性腎臓病の可能性があります。
今回は、「慢性腎臓病」についてお話をしたいと思います。
慢性腎臓病とは?
慢性腎臓病、Chronic Kidney Disease(CKD)は「3ヶ月以上の持続的な腎障害の存在(主に蛋白尿)および/または持続的な糸球体濾過量の低下(<50%)が存在する場合に診断される病気」と定義されています。原因は様々で、炎症や免疫が関わる疾患や薬物など多岐にわたります。
CKDの診断
身体検査、血液検査、尿検査、血圧測定、画像診断を行うことによって診断されます。
早期発見が難しく健康診断で発見されることがほとんどです。
症状が現れて発見される時はすでにステージが進行しており、残存している腎機能は3割以下となっています。
CKDの予後
慢性腎臓病と診断された場合、(全ステージでの平均で)犬の場合の平均生存期間は約1年、猫の場合は約2年と考えられており、慢性腎臓病のステージや血液検査結果、BCS、尿蛋白、血圧などの項目の数値次第で予後が変わってきます。
CKDの治療について
それでは、慢性腎臓病と診断がついた場合の治療法ですが、治療法の説明の前に慢性腎臓病のステージについて簡単に解説します。
StageⅠ
– Cre正常、SDMA正常〜軽度上昇。
– その他(画像検査や尿比重等)の腎臓の異常所見を持つ。
StageⅡ
– Cre正常〜軽度上昇。
– 軽度の腎性の貧血。
StageⅢ
– 中程度の腎性の貧血。
– このステージで慢性腎不全による症状が出始めることが多い。
StageⅣ
– 慢性腎不全の症状があり、尿毒症(毒素を排泄できず体に溜まる状態)の危険あり。
ここでステージを理解する上で大切なのは、ステージ2の段階で腎臓の機能が約30%まで低下しているということです。(人のステージでは中〜高度の腎障害レベル)
つまり、ステージが低いように見えて結構腎臓はダメージを受けていると理解しておかなければいけません。
では、具体的にどのように治療していくかですが、上記ステージと尿蛋白と血圧などを評価した上で治療を選択していきます。
また、腎臓は再生ができない臓器ですので、治していくというより「悪化させずに維持していく」ことが治療の目的になります。
①脱水管理
– こまめな給水、ウェットフードへの変更、皮下補液を行います。
②食事療法
– ステージや筋肉量など症例の状態によって食事療法を考えていきます。基本的にはステージが進行するにつれて、高タンパク食の食事を避けリンを制限した腎臓病用療法食への変更を行います。
③薬剤の選択
– 正しく病態を把握した上で選択していきます。
o 高血圧:テルミサルタン、アムロジピン
o 蛋白尿:ACE阻害薬、テルミサルタン
o 貧血:エリスロポエチン製剤や鉄製剤
o 食欲不振や嘔吐:ミルタザピンやマロピタント
o 高リン血症:リン吸着剤
– 血管を拡張し腎臓の血流を改善することで腎機能低下を抑えるといった『ラプロス』という動物用医薬品もあります。
まとめ
以上の通り、慢性腎臓病は見つかりにくく、見つかった場合は持続的な通院と治療が必要になってくる病気です。早期発見のためには定期的な健康診断を欠かさず行い、また見つかった場合は悪化させないようにしていかなければいけません。
もし最初にあげた項目で何か気になることがありましたら、遠慮なく相談してください。
獣医師 宮本
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