パル日記

2025.07.19

獣医師コラム★第16回『SFTS』

こんにちは!獣医師の本卦、本多です。
気がつけば夏真っ盛りで、昼間にお出かけするのも躊躇ってしまう時期になってきました。やっぱり夏はクーラーの効いた部屋でアイスを食べるのが一番ですね😝
さて今回は最近ニュースでも報道の多い、ワンちゃんネコちゃんにとっても、また飼い主様にとっても重要なSFTSとマダニの予防についてご紹介します。


SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSとは、SFTSウイルスを保有したマダニに刺されることにより、ワンちゃンやネコちゃんだけではなく人にも感染する人獣共通感染症感染のことです。
最近では国内でも高齢者や獣医師などが亡くなったというニュースも報道されていて、身近で起こりうるとても怖い感染症となっています。

 

発生状況・症状・致死率
SFTSは下記の通り西日本を中心に発生しており、年間の発生数は、人では約100例、犬では約10例、猫では約200例報告されています。発熱や黄疸など症状も様々で、人では27~31%(日本)、犬では43%、猫では62.3%という高い致死率となっています。

※猫同士の感染や、猫から人への感染が認められているため、発症した動物の体液(唾液、糞便、尿)への接触にも注意が必要です。


診断
SFTSは、臨床症状、身体検査、血液検査、画像検査、PCR検査、ELISA検査などで診断していきます。
特に猫では猫汎白血球減少症(パルボウイルス感染症)やリンパ腫でも似たような症状を起こすことがあることから、発見が遅れることもあります。


動物のSFTSに対する治療
SFTSに対する特異的な治療法はなく、輸液、制吐剤、抗痙攣薬などの対症療法が中心となってきます。
そのためSFTSウイルスに感染しないためのマダニ予防が特に大切となるのです。


マダニの予防について(通年予防が推奨されています)
「我が家のワンちゃんやネコちゃんは完全室内飼いだからマダニ予防をしなくても大丈夫」と考えている飼い主さんも多いと思いますが、そうとは限りません。動物病院に定期的に来院していたり、ペットショップなどから新しい子を迎えたり、お出かけした飼い主様のズボンの裾などに着いたマダニが室内に入り込むなど、感染するリスクは身近なところに隠れています。またマダニが繁殖しやすい温度は13℃以上といわれているため、冬でも室内に潜んでる可能性があり、通年予防していく必要があります。


マダニを発見したら
一度寄生したマダニは簡単に取ることはできません。無理に取ろうとすると体の一部が皮膚の内部に残り別の感染症を引き起こす恐れがあります。そのため寄生したマダニを発見した場合は、そのままの状態で病院に相談しましょう。


まとめ
繰り返しにはなりますが、SFTSは一度感染してしまうと治療が難しく、致死率も高い人獣共通感染症です。ワンちゃんネコちゃんだけでなく飼い主様自身を守る上でも予防は重要となってきます。フィラリアの予防シーズンも続いていますが、同時にノミやマダニの予防もしっかりと心がけていきましょう。

 

獣医師 本卦・本多