パル日記
獣医師コラム★第18回『犬の下痢』
こんにちは!獣医師の小野と舘川です!
まだまだ蒸し暑さが続き、愛犬の体調も気になる季節ですね。診察の中で飼い主さんからよく相談をいただく症状のひとつに「下痢」があります。
「一時的な食べすぎかな?」と思える場合もあれば、実は重大な病気のサインであることも….今回は犬の下痢について詳しくお話ししたいと思います。
下痢とは、便の水分量が増えて軟便や水様便になる状態をいいます。軽度なら元気食欲に問題なく一時的な消化不良で起こることもあれば、内臓疾患が隠れている場合もあります。特に子犬や高齢犬では下痢が続くと腸管から水分と電解質が失われ、脱水や電解質異常を引き起こしたり、栄養吸収がうまくできずに痩せてしまうこともありるため、注意が必要です。
■ 原因
犬の下痢の原因は多岐にわたりますが、大きく「急性」と「慢性」に分けて考えられます。
急性の下痢の主な原因
- 食べすぎ・早食い
- 人の食べ物や拾い食い
- 急なフード変更
- 細菌・ウイルス感染
- 寄生虫感染
- ストレス環境の変化、旅行、雷など
慢性の下痢の主な原因
- 食物アレルギーや食事不耐性
- 炎症性腸疾患IBD
- 膵外分泌不全
- ホルモン異常甲状腺、副腎など
- 腫瘍やポリープなどの腸の病気
■ 症状
下痢といっても、便の状態や排便の様子などによって原因やどの部位に問題があるのか推測する重要な手掛かりとなります。
・水様性下痢→ 急性腸炎や感染性腸炎でしばしばみられる
- 粘液や鮮血を伴う下痢→ 大腸炎、寄生虫感染、炎症性疾患を疑う
- 灰白色・脂肪性の便→ 膵外分泌不全や胆道系疾患を疑う
- 下痢に加えて嘔吐、食欲不振、活動性低下→ 重度消化管障害や全身性疾患の可能性がある
さらに、下痢は「小腸からくるもの」と「大腸からくるもの」に大きく分けられます。
小腸性下痢
・便の量が多く、1回でたくさん出る
・黒色の血が混じることがある
・嘔吐を伴うケースも多い
・栄養が吸収できないため、体重減少が見られることがある
大腸性下痢
・少量の便を何度も繰り返し出す
・粘液や鮮血が混じることが多い
・排便時にしぶりいきみを見せる
・栄養吸収は保たれているので、体重減少はあまりない
このように、下痢の特徴を観察することで、小腸性か大腸性かをある程度見極めることができます。特に小腸性の下痢は原因が多岐にわたり、時に重症化することもあるため、早めに受診して対応することが大切です。
■ 検査
原因を突き止めるために、以下のような検査を行います。
・糞便検査→寄生虫、細菌、消化不良の有無を確認
・血液検査→炎症反応、内臓やホルモンの状態をチェック
・レントゲン・エコー検査→腸の動きや腫瘍などを確認
また、必要に応じてアレルギー検査や内視鏡検査、CT検査を行い、確定診断へと繋げていきます。
■ 治療
原因に応じて治療法も異なります。
・整腸剤や吸着剤の投与
・感染がある場合は抗生剤、駆虫薬の使用
・脱水や食欲低下がある場合は点滴
・消化器用の療法食への切り替え
・慢性疾患が原因なら長期的な内服・食事療法
・腫瘍などの場合は外科療法や放射線療法
■ 最後に
「少し柔らかい便だから大丈夫かな」と様子を見ていたら、実は重大な病気のサインだった、というケースもあります。元気食欲低下や嘔吐を伴う下痢、2日以上続く下痢は特に注意が必要です。「最近お腹を壊しやすい」「繰り返し下痢をする」など気になることがあれば、ぜひ早めにご相談ください。愛犬の健康を守るために日頃のチェックと定期的な健康診断を忘れずに行いましょう!
小野・舘川
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