パル日記

2017.03.29

フィラリア症の手術(>_

世間の人々のなかでは『フィラリア感染だなんて過去の病気じゃないの』とか『予防薬ってきっちり飲む必要があるの?体にいいハーブで予防♡』というトンデモ情報が流布しているのを時折ネットやSNSで見かけたりすることがありますが……フィラリアはいまだに、現在進行形で私たちの大事な家族の側に存在する、致死性の寄生虫感染症です(>_<)

今日の患者さんは、まだ8歳の日本犬。
急性フィラリア症でセカンドオピニオンで来院されましたが、すでにフィラリアからの循環不全による腎不全、不整脈が出ていて残念ながら手術中に亡くなられました。

飼い主様はかかりつけ医で混合ワクチン予防はされていたそうですが、フィラリアの予防をすすめられたことが無く、フィラリアの予防自体ご存じなかったようでとても後悔されていまました。
自分としてもこの手術はおそらくこの子の腎臓や心臓は手術に耐えきれないよ、というお話(かかりつけ医でも同じことを言われたよう)をさせて頂いたのですが、1%でも助かる可能性があるならできるだけのことをしてあげたいという強いご希望で手術に臨んだ次第です。
飼い主様の御許可を頂いて手術中の画像を掲載させていただきました。

右の頸静脈からフレキシブルアリゲータ鉗子(画像には黒く長く写っています)を心臓まで挿入し、右心房・右心室内にいるフィラリアを釣りだしていきます。

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白いそうめんのようなものがフィラリア成虫です。

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フィラリア症は、ノーベル賞をとられた大村教授がイベルメクチンを発見して以来、犬たちにとって100%予防できる病気になりました。
でも予防しなければ九州であれば3回夏を過ごした犬の90%がフィラリアに感染していたというデータもあるくらい感染しやすい病気です。
予防がすすんでそうな印象の東京都でもいまだにフィラリア感染犬の数は二桁にのぼるという報告もあります。
また猫ちゃんも(特に九州では)フィラリアの感染率は10%で、突然死やネコ喘息の原因になるといわれてます。

フィラリアの予防時期はHDU(Heartworm Developmento heat Unit)という、フィラリアを媒介する蚊の体内でフィラリア幼虫が成熟するために必要な積算温度(気温)のデータに基づいて地域ごとに細かく調べられています。
ちなみに福岡県でのここ15年間でいちばん早い推定感染開始日は4/29です!
パルではこのHDUを参考にしてフィラリアの予防時期を飼い主様にお知らせしています。

ちなみに沖縄では1/23、北海道は札幌では6/22が予防開始日(参考)です。
暖かい地域ほど早く、寒い地域ほど蚊が遅く出るということですね。

フルフル