パル日記

2015.05.05

胆のう結石

予告宣告どうり、胆のう手術の報告です{#emotions_dlg.099}

以前、胆のうや肝臓の手術をよくされる岡山の小出先生が、
『胆のうの手術は患者さんひとりひとり全部違うよ。大変だよ』
とおっしゃってましたが、そのお言葉どうり、今回4月はじめに立て続けに手術になった5頭も、みんながみんな全く違う病態でした。

その小出先生が、獣医師会雑誌に『胆石を認め胆のう切除術を実施した犬50症例における臨床検査所見と手術成績』という論文を掲載されてました。
その論文の中で、総胆管内の胆石の数や位置把握に役に立っていたのがCTです。
レントゲンやエコーだけではいまいち胆石がどこに詰まってるのか完璧には把握できないな~と常々思っていたので、今回の子たちはみんなCT撮らせていただきました。CT撮るとびっくりするほど胆石や総胆管の走行が鮮明になります{#emotions_dlg.116}

そして今回紹介させていただくのは、私が主治医で治療しているふたりの患者さんです。
偶然にもふたりともミニチュアダックスちゃん。
ダックスはここ数十年でとても人気が出て飼われている方の多い犬種ですが、その子たちがだんだんシニアになってきて人間と同じように中高年の病気が出るステージになりつつあるようです{#emotions_dlg.112}

この子はそらちゃん。
定期健診で、胆泥症だったのが急に砂状の細かい胆石ができているのが見つかって、飼い主さんと話し合いの末、ひどくなる前に胆のう切除しよう!ということになりました。

術前のレントゲンでも胆石が確認できたので、総胆管に胆石が落ちて詰まってなきゃいいけど…..と心配しながらCT撮ってもらうと、胆石はまだ胆嚢頚部にあります!これは手術が楽です!!
総 胆管に結石が詰まって取れない場合は、十二指腸を開いて総胆管開口部から胆嚢に向けて生理的食塩水で優しく洗い流してあげたり、総胆管を結石が詰まってい るところで切り広げて結石を摘出したり、最悪十二指腸と胆のうをつなげるバイパスを人工的に作ってあげないといけなくなることがあります。
後者の術式になればなるほど難しく、かつ、術後も命の危険が高くなると思ってください。

堪能1

分かりにくいと思いますので、解説付きで同じ画像をもう一枚
赤い点線で囲まれたナスっぽいのが胆のうで、黄色矢印の先の白く輝いているのが砂状胆石です

堪能2

別の画面で見るとこう

堪能3

予想どうり手術は楽でした{#emotions_dlg.098}
※血が苦手な方は手術画像をクリックしないでね。画面が大きくなります。
薄青のようなグレーのような袋が胆のうです

堪能4

他の臓器や肝臓との癒着が少ない子は、胆のう漿膜面を薄皮一枚剥いでいくようにして肝臓から分離していきます。マイクロピンセットや直角鉗子、そして滅菌綿棒などを使って、くるっとビワの皮よりもやや薄いくらいでむいていきます。

堪能5

胆のう頚部近くまでむくとこんな感じ

堪能6

あとは定法どうり胆のう摘出して、肝生検して終わり
胆のうの中にあった砂状の胆石はこんな感じです。幸い細菌感染しておらず、術後の回復もたいへんすばやくて一安心です

堪能7

そしてもうひとりの子はちゅうたちゃん。
もともと胆石があるのがわかってて経過観察していたのですが、ある日急にひどい下痢と元気の低下が。
胃拡張もあり、最初は胃内異物を疑いましたが確定診断には至らず、あと胃内異物ではありえない炎症の数値がどんどん上昇していったため、責任病変は胆石か胆のう炎ではないかと疑って手術させていただきました。

堪能8

解説を付けると、黄色の矢印の先、白く輝いているのが胆石です。

堪能9

大きいのが一つと、小さい砂状のが(この先にも)無数にあります。でも、総胆管には詰まってないようなので良かったです!

実はCT撮ってもらった時点で胃内異物は無かろう、という診断をもらえたので、じゃあ悪いのは胆石だろう!と張り切って胆のう摘出してます。
幸い癒着もほとんどなく、症状がひどかった割には手術は楽に終わりました。

そしてとれた胆石がコレ 大きさがわかりやすいように10円玉の上に乗せてみました。

堪能10

そして胆汁の細菌培養検査で大腸菌の感染が明らかになりました!
急な下痢と元気の低下は、この急性細菌性胆嚢炎からだったのでしょう。
普段、胆のうの中には菌はいませんから、胆石ができて感染しやすくなっていたのでしょう。
石を取り除かないと、また感染してしまいますので手術してよかった…..

ちゅうたちゃんは胆のうの中にいた菌にあった抗生剤を投与して順調に回復することができました。

ちなみに4月に手術になった他の3頭のうち2頭の方が病態も術式もとてもとてもたいへんな手術でした(>_<)
今回は幸いみんな元気に退院していただくことができましたが、胆嚢の病気はこじれるとたいへん厄介です。しかも、こじれるまでほぼ無症状というこれまた見つけにく疾患でもあります。

早い方では3歳ぐらいから、ほとんどは7歳ぐらいから胆泥が貯まり始めることが多いので、健康診断か何かのついでにお腹のエコー診てもらうことをおススメします。
ちなみに、フルサワにもポリープか結石かよくわからないものが胆嚢の中にひとつあります{#emotions_dlg.109}
『これ、結石ってしっかり分かるようになったら、すぐ手術してね♥』と毎年健康診断で言われ続けています…..今のところポリープのようですが…..

フルフル