パル日記

2015.06.17

鼻の腫瘍と向き合う

こんにちは、獣医師の宮本です。
今回は、鼻に癌が見つかったのですが、病気とうまく向き合い、毎日を幸せに過ごしているジョッシュくんについて紹介します。
犬の鼻にできる腫瘍は、基本的に悪いものが多く、鼻腔腺癌や扁平上皮癌、移行上皮癌などが挙げられます。これらの腫瘍は周りに広がっていきやすく、ひどい場合には、骨を破壊し顔面変形を起こしたり脳へ進行し発作を起こしたりしてしまいます。
最初の症状としては、鼻出血、鼻水、くしゃみなどで、普通の抗生剤などの治療に反応がほとんど無い、ということが多く、また、通常のレントゲンでは周りが全部骨なのでなかなか見つかりにくく、見つかった際には内部で結構進行していることがほとんどです。診断は主にCTスキャンや内視鏡などで行います。
ジョッシュくんも診断をした際にはかなり進行した状態でした。

ジョッシュ CT1

ジョッシュ CT2

鼻腔腫瘍の治療法は、初期であれば手術も検討するところですが、放射線療法がメインとなります。ただ、残念ながら九州に放射線療法を行える場所が今の所ありませんので(メガボルテージについてです)、なかなか手が出せないのが現実的なところです。抗がん剤などの化学療法については、今の所ほとんど効果が得られていません。
ジョッシュくんはというと、メトロノミック化学療法という、低用量の抗がん剤とがんに効く可能性のあるNSAIDsをおうちで飲んでもらう治療を行っています。この治療はがんを倒すのではなく、がんと付き合っていく治療法で、犬の方では血管肉腫などで文献が出ています。イメージとしてはがんの進行を遅らせるという感じです。残念ながら、鼻腔腫瘍の研究報告はありませんのでどこまで効くのか、効いているのかはわかりません。ジョッシュくんは、月を経るごとにだんだんと腫瘍が大きくなってきていますが、副作用もなくおうちでゆっくり好きなものを食べて、元気に散歩もできながら過ごせているので、やっていて良かったと感じています。
先日は12歳のバースデイを迎えました!幸せいっぱいのジョッシュくんです。美味しいものをたべてだんだん太ってきているので、そっちの方が少し心配な今日この頃です
ジョッシュ3