パル日記

2024.04.27

獣医師コラム★第3回『フィラリア』

皆さんこんにちは!

獣医師コラムも第3回目となりました。今回は濱田が担当いたします。

春といえば、、なフィラリアについてのお話です。

 

フィラリアとは簡潔に言えば、蚊を媒介して体内に侵入し、最終的には心臓に寄生し死をもたらしうる寄生虫です。

フィラリアは犬に特有の寄生虫かと思われがちですが、実はどの動物にも寄生します。ですのでワンちゃんに限らず、猫ちゃんもフィラリアの予防が推奨されます。ただし、犬が唯一の好適宿主、つまりはフィラリアが育ちやすい環境であることがわかっています。

 

 

この怖い寄生虫から愛犬・愛猫を守るためには、蚊の出るシーズンをしっかりと把握し、正しい予防薬の使用が必要です。

福岡では※HDUに基づいて蚊の出現する時期は4-11月と言われています。多くのワンちゃんが使用する1ヶ月に1度飲むタイプのフィラリア予防薬は、服用することでそれまでの1ヶ月間に体内に取り込まれたフィラリアの幼虫を殺滅することを目的としています。よって予防薬を服用すべき期間は5-12月というわけです。

※ HDU(Heartworm Development heart Unit)とは、蚊の体内でフィラリアが成熟するために必要な積算温度の単位

 

 

当院ではフィラリアシーズンのスタートの際には基本的に血液検査を行います。

ただし、猫ちゃんの場合はフィラリアの検査方法が未だ確立されておりません。

予防をする上でなぜ検査が必要なのだろう?と疑問が湧く方もいらっしゃるかと思います。その理由もまた、命を守るためです。

 

ワンちゃんの場合は、フィラリアに感染していて体内に幼虫が大量にいる場合に予防薬を使用すると、幼虫が一気に死滅することでショック死を引き起こす可能性があります。これを防ぐために検査が必要となります。

猫ちゃんの場合は、ショック死を引き起こしうるほどの幼虫が生育しにくいことや検査で陽性が出にくいことから検査は必須ではありません。

 

当院で扱っている予防薬にも様々種類がございます。

一般的に多く使用されるものは、1ヶ月に1回飲むタイプでノミダニ予防も可能なお薬です。これにも錠剤タイプとチュアブルタイプとございますので愛犬の性格にあわせてご検討ください。

その他にもフィラリア予防のみの飲む予防薬や、フィラリア予防も含む首元につけるスポットタイプの予防薬、1年に1回の注射タイプの予防薬などございます。それぞれメリット・デメリットがあるため気になる点は診察時にご相談ください。

 

 

それでは、フィラリアに感染してしまうとどのような症状が起き、どのような治療ができるのかお話します。

ワンちゃんがフィラリアに感染すると、体内で時間をかけて幼虫から成虫へ成長し、最終的に心臓に寄生します。心臓に行き着くと、心臓自体への影響はもちろん、全身への血液供給を支える臓器ゆえに肺・腎臓・肝臓など多くの臓器に弊害をもたらします。その結果、発咳や腹水などの症状を引き起こし、重度になると呼吸困難や黄疸を示し急性に死へ向かっていきます。

猫ちゃんの場合は症状はわかりにくく、肺の血管に成虫が詰まることで急死することがあります。

感染を初期で発見できた場合には、適正な駆虫薬の使用により治療を行います。症状が重度で感染が判明した場合には、手術によるフィラリアの釣り出しが行われることもあります。

 

現在、日本でフィラリア陽性犬は昔に比べるとはるかに少なくなってきています。それは多くの飼い主さんがフィラリアの怖さを理解し、予防をしっかりと行なっているからです。

 

春の予防シーズンはお待たせする時間も長く、ご迷惑をおかけしますが愛犬・愛猫のためにフィラリア予防をしっかりと行なっていきましょう。

 

濱田澪